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稲場圭信の研究室 Keishin INABA

大阪大学大学院教授(人間科学研究科):専門は共生学。地域資源(寺社等宗教施設と学校)と科学技術による減災が近年の研究テーマ。日本最大の避難所情報、未来共生災害救援マップ(災救マップ)開発・運営

行動発達概論「スピリチュアリティとQOL」

講義のスライドメモです。
■WHO世界保健機関の健康概念
physical, mental and social にspiritualを追加するべきか?

■スピリチュアリティとは
・霊性、精神性?
・目に見えないつながりの感覚や意識
・人間を超越したような存在との関係
・自己に宿る見えない生命力
・人生の意味     など

■スピリチュアリティ概念の諸相
・「自分の中や自分と他者との間で働いていると感じられる、自分を超えた何ものかとつながっている感覚」 樫尾直樹、2004『スピリチュアリティの社会学』

・「個々人の体験に焦点をおき、当事者が何らかの手の届かない不可知、不可視の存在(たとえば大自然、宇宙、内なる神/自己意識、特別な人間など)と神秘的なつながりを得て、非日常的な体験をしたり、自己が高められるという感覚をもったりすること」伊藤雅之、2003『現代社会とスピリチュアリティ』

・「人間の実在の普遍的、根源的意味にかかわり、それは、意味や目的、そして自己と他者と絶対者にかかわる道徳的な枠組みの探求」木原活信、2003『対人援助の福祉エートス』

■スピリチュアリティの要素
・超越的な次元
・人生の意味・目的・使命
・生命の神聖さ
・物質的な価値の非重要視
・利他主義
・理想主義    など

■スピリチュアリティと行動発達
・スピリチュアリティは、人間存在、生き方そのものを問いかける
・意識変容
・行動変容
・ライフスタイルの変容    発達と適応

■日本社会に浸透するスピリチュアリティ
・精神世界に関する情報
・自分探し、本当の自分
・音楽、映画などのメッセージ・テーマ
・占いに加えて心理ゲーム・理学ブーム
・物質と対置される心の問題が社会的課題
・福祉、介護、医療の場「いのちの尊厳」
・ボランティアや自助グループの支えあい・絆

使用される場:医療、福祉、臨床心理、芸術、宗教、精神世界

語り手:医師、カウンセラー、心理学者、教師、宗教者、芸術家、ヒューマンケア従事者
■QOL:Quality Of Lifeとスピリチュアリティの接点
・QOLは、人間が自分で生活の選択・管理を行っていること、自分で人生において意味があるとみなせる目標を持っていること ⇒ ライフスタイル・行動の変容

■QOLとスピリチュアリティの実践
・環境問題への行動・日常の取り組み
  (リサイクル・スローライフ・LOHASなど)
・医療・福祉の場での生命の尊厳
・ボランティアなどの市民活動・市民参加

■QOLと医療
・現代医療の4機能(検査、診断、治療、延命)の限界
質を重要な治療効果と考える
・人間としての尊厳をたもちながら生を全うする(スピリチュアリティの要素)
・治療法の選択(免疫療法、民間療法 etc.)

■ターミナルケア Terminal Care
末期癌などにより、回復の見込みのない患者を医療的・精神的・社会的な側面からケアすること

■ターミナルケアについて考える(QOLとスピリチュアリティの視点から)
・本人が死と向き合えるかどうか誰が分かるのか?
・家族はどのように悲しみと向き合ったらよいのか?
・もし、自分が末期癌になったら、告知して欲しいか?
・本人が望まなくても家族には延命して長く生きて欲しいか?

■社会化と精神的ストレス
・価値相対主義
・人間関係を築きにくい現代社会
  流動性の高い社会。リスク社会
  モダン・ パースペクティブ(効率・結果
                 業績評価etc.)
⇒ 1次関係と2次関係のねじれ
⇒ スピリチュアリティの危機
⇒ きずなを作り出す? コミュニティの再生?

■社会化
個人が社会や集団に容認された行動形態、言葉、ものの考え方、感情の表し方などの規範を他の人との相互作用を通して習得すること

■社会化とライフサイクル
・幼年期社会化:乳児期から児童期に、家族集団および子どもの仲間集団で、その社会にふさわしい基本的な振る舞いを獲得し、パーソナリティの基礎を形成

・青年期社会化:思春期から青年期に、社会集団のなかで自覚され、評価される自己、すなわちアイデンティティを獲得

・成人期社会化:社会変動の激しい現代社会

■精神医学
うつ病の向精神薬プロザック
多動性障害の向精神薬リタリン
乳幼児のねむり薬

⇒ 薬物により脳に働きかける。人間の感情を左右して、当事者の適応力を高める。
⇒ 人間が人間であることをやめること? 

■精神医学の問題点
他者に危害を加える行動は別として、本人の自由意志によるものでも、何らかの病的精神症状が見られる時には、精神医学では病的な産物として治療の対象とする場合がある

QOLを重視する現代社会にあって、人間が自分で生活のあり方・生き方を選択・管理することを奪っていないか? 一方、他者に危害を加える行動の予防も

■現代社会の課題
・心・精神と社会の観点から人間行動の発達と適応を考える
・キーワード゙:スピリチュアリティ、利他主義、個としての成長と絆、ボランティア、支え合い

関心がある人は
   行動発達論コース、稲場ゼミへ
    スピリチュアリティ研究法
    スピリチュアリティ研究演習1・2
    利他的行動研究
    宗教社会学
    行動発達演習

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