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稲場圭信の研究室 Keishin INABA

大阪大学大学院教授(人間科学研究科):専門は共生学。地域資源(寺社等宗教施設と学校)と科学技術による減災が近年の研究テーマ。日本最大の避難所情報、未来共生災害救援マップ(災救マップ)開発・運営

NHK 首都圏ネットワーク(2018年3月9日) 「帰宅困難者対策 寺や神社を防災拠点に」

NHK 首都圏ネットワーク(2018年3月9日) 「帰宅困難者対策 寺や神社を防災拠点に」

http://www.nhk.or.jp/shutoken/net/report/20180309.html


帰宅困難者のための一時滞在施設や避難場所の確保は各地で進められていますが、都内では目標の3分の1にとどまっていてまだ十分ではありません。
そうした中、いま注目されているのが宗教施設です。

東日本大震災の当日、帰宅困難者を受け入れた東京・港区の増上寺です。
地震発生後、周囲には大勢の帰宅困難者があふれました。

寺では施設の一部を急きょ開放。
おにぎりやみそ汁も用意し、500人以上が一晩を過ごしました。

増上寺の山﨑東海さんは「『施設を開放しておりますので、ご自由に休憩してください』と、必死で声をかけました」と振り返ります。

しかし、多くの宗教施設は避難者を受け入れる仕組みがありませんでした。
足立区の善立寺もその1つです。
この寺は避難場所などに指定されておらず、地域の人たちは近くの河川敷に逃げることになっています。


今もこの寺は防災マップに記載がなく、防災拠点として認識されていません。
住職の新倉典生さんは、このままでは災害時に役立てられないと、行政との連携の必要性を痛感しています。

新倉さんは「多くの宗教法人の方々が災害時に何か協力したいという思いを持っているので、行政と協力し合い、『こんな協力のしかたがあります』とか、『備蓄倉庫としての協力ができます』といったような情報を伝えていきたい」と提言しています。

震災を教訓に、新倉さんは行政との連携に向けて動き始めています。
新倉さんは、宗派を超えた団体でつくる「東京都宗教連盟」の代表として、去年9月に都庁を訪問。
新倉さんは震災時の宗教施設について、「一時滞在施設として有効活用について促進を図りたい」と訴えました。
都内にある寺や神社、教会など、およそ4000の施設を災害時に活用してもらおうと、協力を申し出たのです。

ただ、課題となっているのが宗教施設の耐震性です。
豊島区の金剛院も耐震性が十分でないとして、震災当日、受け入れができませんでした。
宗教施設は昔からの建物が多く、おととしの熊本地震では神社や寺などが倒壊する被害が出ました。

そこで金剛院が、東日本大震災のあとに建てたのがこちらの施設。
ふだんは地域住民の交流の場となっていて、災害時には避難スペースにもなります。
しかし費用がかかることなどが壁となり、耐震化を進めているのは一部の寺などにとどまっています。

どの施設が耐震性を満たし、備蓄品を確保できているのか。
新倉さんたち宗教連盟は、こうした情報についてデータベース化する取り組みを、この春から始めます。
都内各地の宗教施設がどのような協力ができるのかを把握し、災害に備えようというのです。

新倉さんは「例えば建物が古い、狭いとか、いろいろな事情がありますので、地域に災害時に貢献していただきたいので、いろいろな側面から調査をしたい」と話しています。

新たな防災拠点として注目される宗教施設。
施設の安全性を確保し、避難場所としての周知をどう進めていくか。
今後の行政との連携がかぎになりそうです。

宗教と防災の関係に詳しい大阪大学大学院の稲場圭信教授は、「行政が看板を寺・神社に設置して、地域の方々にここが避難場所ですよというような取り組みが進んでいる地域もあります。どこまで宗教施設が負担をするのか、行政がどこまで連携をしていくのか、事前に協定や覚え書きを定めていく必要がある」と指摘しています。

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