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稲場圭信の研究室 Keishin INABA

大阪大学大学院教授(人間科学研究科):専門は共生学。地域資源(寺社等宗教施設と学校)と科学技術による減災が近年の研究テーマ。日本最大の避難所情報、未来共生災害救援マップ(災救マップ)開発・運営

阪神淡路大震災とボランティア

1995年1月17日午前5時46分。
6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災。あの日から23年。

当時、神戸市中央区に住んでいた兄が被災。兄はどうにか無事だったので、私は東京から神戸にかけつけ、子どものケアの活動に。

阪神淡路大震災とボランティア
「子どものケアためのNGO:楽楽」
震災直後から、私はパソコン通信(ニフティのフォーラム。当時、インターネットは普及していませんでした)で情報交換し、当時住んでいた東京から神戸に入り、パソコン通信で知り合った数人で、活動拠点、「子どものケアためのNGO『楽楽』」をつくりました。
目的は、子どもの精神面でのサポート。六甲学院の校長先生のご厚意でスペースをお借りできることを確認し、灘区役所をはじめとして六甲小学校など数ヶ所の避難所をまわり東京へ一時戻りました。

『楽楽』の活動は、始動当初、まったく知らないもの同士が集まった10人にも満たない組織でしたが、その後、後方支援を含めて80名以上が参加。六甲学院内に本部を設置し、20名ほどが泊まり込み、日中は六甲小学校を中心に活動を続けました。
当初、組織がないところから始まった神戸でのボランティア活動を通して感じられたことは、目に見える有益な活動の裏で、個々のボランティアが傷つきやすい状況にあるということ。参加動機はさまざま。子どものケアをしていくうちに自己の問題が強く認識され、活動を続けられないほど押し込めていた心の傷を再開示してしまった人、気を張り、頑張りすぎて倒れてしまった人などたくさんの問題もありました。

1995年1月13日の閣議で、山口鶴男総務庁長官(当時)は「青年問題の現状と対策」を報告しました。その中で、民間の1994年度の調査をあげ、八割以上の青少年がボランティア活動に参加する意志を持っているものの実行している人は5%、経験者27%にとどまっていると述べ、ボランティア活動への参加を促進する条件整備や情報提供の必要性を指摘しました。皮肉にもその四日後の阪神淡路大震災により、ボランティア活動の大々的な場が提供されましたが、ここに意識の高まりを見ることができました。
利己主義、私生活主義批判が高まっているなかで、現実には「利他」の精神が見られます。一方、当時はNPO法もなく、法的制度を含めてボランティア活動の基盤づくりが欧米に比べてかなり遅れていると実感しました。

今、日本社会は、NPO法制度や災害時の対応の仕組みが整い、防災先進国です。制度やマニュアル化は進んでいるが、人びとの艱難辛苦に即応し、融通無碍、臨機応変に対応できる人がどれほどいるか。マニュアル化、ニーズ調査などの仕組みのなかで身動きが取れず、見失っているものはないか。原点に帰る必要を感じます。

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