
------------------------------------------------
記念講演では、稲場圭信氏(神戸大学大学院准教授)が、「『思いやり格差』社会から『支え合う』社会へ」と題して、次のように述べた。
「現代日本は、時には自分を犠牲にして他者のために行動する人と、自分の利益だけを考え他者を気に掛けない人、つまりは他者への思いやりを持つ人と持たない人に分断された、『思いやり格差』社会(人々の思いやりの度合いに格差が生じている社会)に向かっている。
大人は子どもに対して、思いやりの大切さを説くだけでなく、生きたロールモデル(手本)になることが大事で、親が忙しい中で何かの活動にかかわるとか、近所の人に対して親切な行動をするといった姿を見て、子どもは育つ。
また、価値観の衝突を乗り越えるような、他者との共同作業の場も必要だ。日本社会は、『和』を大切にする社会だが、本当に思いやりにあふれた社会になっているかどうか。空気を読んで自分の考え方を主張しない社会の下では、真の思いやりは育たない。お互いの考え方をぶつけ合い、コミュニケーションを取っていく中で、思いやりの心は育っていく。
活動にあまり参加できなくても、入ごととせず、心の片隅で他者のことを思いやる、それが希望ある社会の一歩となる。気が付いた人が、まずできることから始めよう」と述べた。(金光新聞:2009,8,2付)
------------------------------------------------
稲場圭信 著『思いやり格差が日本をダメにする
~支え合う社会をつくる8つのアプローチ』
NHK出版、生活人新書270、税込価格:693円