(日本宗教学会第65回学術大会、2006年9月17日発表の要旨:原題『宗教と利他主義:現代社会の新たな動きの分析』)
現代社会に生きる人びとの心と行いに「思いやり格差」が生まれている。時には自分を犠牲にしてまでも他者のために行動をする人、利他主義の実践者。少しの時間でも他者のためにボランティア活動をする人。自分の利益と豊かな老後だけを考える人。日本という国で日本国民から得た収益、それを高い税金で取られてはたまらないと海外に拠点をうつす企業、法人、資産家。利潤をあげ、自社のブランドを守るためには、消費者の安全をないがしろにし、隠蔽工作を繰り返す企業。お蔭様やお互い様といった言葉を忘れ、自分のことしか考えない自己実現や成功者という言葉に酔いしれる実業家。経済格差は問題ではあろうが、次の世代への橋渡しとしての大人の責任を考えると、利他主義、「思いやり格差」の方がより根本的で、重要な問題である。 【“宗教と利他主義研究:「思いやり格差社会」の到来”の続きを読む】