稲場圭信の研究室 Keishin INABA

利他主義・市民社会論、ソーシャル・キャピタルとしての宗教に関する研究、宗教社会学:::稲場圭信(大阪大学大学院教授) Keishin INABA(Ph.D.)'s site for the study of altruism, civil society and religion as social capital.

タクシードライバーの思いやりの行動

アメリカ宗教社会学会ASRでの学会発表のため、フィラデルフィアに行ってきました。2000年にロンドン大学で博士号を取得して以来、10回目の海外での学会発表でした。

フィラデルフィアはアメリカ独立宣言起草の地で、神戸と姉妹都市。ロッキーの舞台にもなった所です。

滞在中、ホテルからある研究所にタクシーで向かいました。約束の時間まで20分しかないので急いでいるとドライバーに告げました。途中、信号でタクシーが止まった時、前方斜め左側の歩道で年老いた男性が倒れており、中年男性がその老人を起き上がらせようと手をかしているのが眼にとまりました。老人の手には杖が。しかし、老人は足に力が入らないようで、中年男性が持ち上げようとも上手くいきません。

信号が赤になるとドライバーは老人の近くに車を止め、「直ぐにもどる。時間は大丈夫。」と私に言ってタクシーを飛び出しました。中年男性と一緒にドライバーは老人の体を支え、引き上げようとしても老人は立つことができません。困っていると、向かい側の道路に1人の男性が。ドライバーはその男性に向かって、「近くのホテルから車椅子をもって来てくれないか」と大声で一言。その後、ドライバーは老人と中年男性に何かを言ってタクシーに戻って来ました。

私はというと、あの老人はどうしたのだろうか、大丈夫だろうかという心配と、約束の時間に間に合うのだろうかという不安が心の中で交錯。一方、ドライバーはタクシーを急発進させながら、携帯でどこかに電話。「老人が○○ストリートで倒れている。歩けないようだ。車椅子を頼む」。警察へ電話をしたのです。とても機敏。感心していると、目的地に到着。約束の時間にはギリギリセーフ!

まさに聖書に出てくる良きサマリア人の行動、利他的行動でした。しかし、ドライバーはムスリム、イスラム教徒、倒れていた老人は白人、手をかしていた中年男性は黒人でした。映画のワンシーンを観ているようでした。

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