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稲場圭信の研究室 Keishin INABA

大阪大学大学院教授(人間科学研究科):専門は共生学。地域資源(寺社等宗教施設と学校)と科学技術による減災が近年の研究テーマ。日本最大の避難所情報、未来共生災害救援マップ(災救マップ)開発・運営

ここちよいフットワークのよさと思いやり

今、東京出張前に大阪空港でこれを書いています。

空港に向かう阪急宝塚線の電車での出来事に心があたたまりました。 【“ここちよいフットワークのよさと思いやり”の続きを読む】

挨拶は思いやりのはじまり

バスの中でのことです。今朝、私が下車するひとつ前のバス停で、30人ほどの学生が降りました。降車の際、何らかのお礼の挨拶をする学生は10人ほどでした。「ありがとうございました」、「ありがとー」、運転手さんのほうを見て言う人、ほとんど見向きもせずにぼそっと言う人、様々です。

運転手さんは、ひとりひとりに「ありがとうございました」「ハイ、ありがとー」と声をかけていました。

私はというと、次のバス停で、バスカードを入れる機械の前で躓きました。恥ずかしい・・・。しかし、何食わぬ顔で「ありがとうございました」、そして運転手さんも、何事もなかったように「ありがとうございました」と。

高齢者が躓いたら、あの運転手さんはきっと声をかけたことでしょう。しかし、今朝の場合には、照れくさいであろう私のことを気遣って、何事もなかったように応じる、何もしないことにも思いやりがみいだせます。

もしかしたら、運転手さんは、私が躓いたことに気がつかなかったのかもしれません。しかし、思いやりの行為として良いように解釈することは、良い思い込み!? そんな些細なことで幸せになれます。

「NPO東灘地域助け合いネットワーク」のセミナー・

「NPO東灘地域助け合いネットワーク」のセミナー・懇親会(ホテル北野プラザ六甲荘で開催)で、「いきがいづくり・健康づくり:思いやりの行動」と題して45分ほど講演しました。スタッフ、ボランティア活動実践者、70、80名の方が熱心に聴いて下さいました。スライドを使って以下のような項目を話しました。

1.思いやりの研究 2.利他主義と利己主義 3.宗教と利他主義 4.利他主義研究/学説・理論 5.日本人の精神的基層 6.募金活動 7.ボランティアのイメージ 8.ボランティア活動の性格 9.自発性のパラドックス 10.実践の留意点 11.継続の原動力 12.学び 13.ロールモデル 14.共同作業

20代から上は80歳まで、平均年齢は60歳くらいでしょうか。人生の先輩の前での講演でした。70歳をこえるボランティアの方々のはつらつとしてお姿には驚かされます。立食パーティーでも、とても有意義な時間を過ごすことができました。NPO東灘地域助け合いネットワークでは、平成16年5月から理事としてお世話になっています。

サッカーを通して言語の壁を越え、心の発達

サッカーを通じて言葉や国籍の違いを乗り越えようと、18日、春日井市の中部大グラウンドで中学生の「子どもワールドカップ」が開かれました。

詳しくは、(朝日新聞愛知版)

日本に暮らす外国籍の子どもたちとの交流に取り組むNPO法人「地球子ども村」が企画、ブラジル、インド、スリランカ、ベルギー、北朝鮮などの国籍をもつ子どもたちが交流しました。

日頃はあまり交流のない子どもたちが、サッカーを通して、少しずつコミュニケーションを取り始めます。時間はかかるでしょう。1回のイベントで終わらせずに、様々な取り組みの継続が必要です。

外国人、他者への差別意識をなくし、思いやりの精神を育てるには、このような場が必要です。仲良しグループの中で、表面的な和を保つ、そのような環境だけにおかれると、内向きで、逸脱行動をとる人、よそ者に対しては非常に冷たい自己中心的な性格になる可能性があります。

価値観の衝突を乗り越えるような、他者との共同作業の場が必要です。それは、人との触れ合い、コミュニケーションによる社会化です。

ある人の言葉です。「個性のぶつかり合い。でもそれは不寛容ということではない。ただ共同作業において、そういった事を剥き出しにする機会があるということ。」

そして、利他的精神の発達につながるのでしょうか。

利他的行動[ソウルの地下鉄事件]を考える

11月10日、ソウルの地下鉄の駅で1歳の赤ちゃんを乗せた乳母車が列車のドアに挟まれ、 数十メートルも引きずられる事件が発生しました。ニュースで映像をみた人も多いと思います。 【“利他的行動[ソウルの地下鉄事件]を考える”の続きを読む】

タクシードライバーの思いやりの行動

アメリカ宗教社会学会ASRでの学会発表のため、フィラデルフィアに行ってきました。2000年にロンドン大学で博士号を取得して以来、10回目の海外での学会発表でした。

フィラデルフィアはアメリカ独立宣言起草の地で、神戸と姉妹都市。ロッキーの舞台にもなった所です。

滞在中、ホテルからある研究所にタクシーで向かいました。約束の時間まで20分しかないので急いでいるとドライバーに告げました。途中、信号でタクシーが止まった時、前方斜め左側の歩道で年老いた男性が倒れており、中年男性がその老人を起き上がらせようと手をかしているのが眼にとまりました。老人の手には杖が。しかし、老人は足に力が入らないようで、中年男性が持ち上げようとも上手くいきません。

信号が赤になるとドライバーは老人の近くに車を止め、「直ぐにもどる。時間は大丈夫。」と私に言ってタクシーを飛び出しました。中年男性と一緒にドライバーは老人の体を支え、引き上げようとしても老人は立つことができません。困っていると、向かい側の道路に1人の男性が。ドライバーはその男性に向かって、「近くのホテルから車椅子をもって来てくれないか」と大声で一言。その後、ドライバーは老人と中年男性に何かを言ってタクシーに戻って来ました。

私はというと、あの老人はどうしたのだろうか、大丈夫だろうかという心配と、約束の時間に間に合うのだろうかという不安が心の中で交錯。一方、ドライバーはタクシーを急発進させながら、携帯でどこかに電話。「老人が○○ストリートで倒れている。歩けないようだ。車椅子を頼む」。警察へ電話をしたのです。とても機敏。感心していると、目的地に到着。約束の時間にはギリギリセーフ!

まさに聖書に出てくる良きサマリア人の行動、利他的行動でした。しかし、ドライバーはムスリム、イスラム教徒、倒れていた老人は白人、手をかしていた中年男性は黒人でした。映画のワンシーンを観ているようでした。

バスの中での出来事

私のひとつ前の座席、入り口近くに座っていた女子学生の横におばあちゃんが乗ってきました。すぐにその学生が「どうぞ」と笑顔で席を譲ると、おばあちゃんは「ありがとう。すまないね」と言って座りました。「いいえ」と笑顔でこたえる学生。

そして、その学生はおばあちゃんの座った席の横に立ちました。しばらくして、おばあちゃんが「次、降りるからね。すまないね」と一言。再び「いいえ」と笑顔でこたえる学生。

次のバス停でおばあちゃんは「ありがとう」とお礼を言い、学生は笑顔で「どういたしまして」。そして学生はその席に座りました。

笑顔のコミュニケーションがとても素敵でした。すぐに体が動いて笑顔で席を譲った学生。その心と行いを素直にありがたく受け取ったおばあちゃん。そして、その場を立ち去るのではなく、そこに自然体で居続けた学生。近くで見ていて、とてもすがすがしい気持ちになりました。

座席を譲った後に別のところに移動する人が多いと思いますが、どうでしょうか?
照れくさい。あるいは、席を譲られた人も気が楽という心づかいかもしれません。

しかし、そこに留まって、最後にどちらかが降りる時に再び言葉を交わすことでこの行為は完結するように感じました。交わされた言葉は少なくとも、何かが学生からおばあちゃんに渡され、そして、おばあちゃんから学生に何かが渡されている・・・。

当事者二人、そして、それを見ていた私を含めた周りの数人、わずか10数分の間にとてもよい気分になったのでは。シャイな人には難しいことかもしれないけれど、はじめましょうか。席を譲ろうとして断わられたらどうしよう? もし、相手から「まだ若い!」と怒られたらどうしよう? 笑顔で申し出て、断わられたら「そうですか」と笑顔でこたえましょうか。

新入生研修会と携帯電話騒動

神戸大学発達科学部人間行動学科「新入生研修会」開催

先週末、新入生の「新入生研修会」を六甲山YMCAで行いました。履修指導の後、バーベキュー、グループワークゲーム、森の運動会と、共同作業や軽い運動をして親睦を深めました。

研修を終えて夕方、発達科学部にバスで到着。解散後、最後まで正門に残っていた9人のうち一人の女子学生Tさんが携帯電話を無くしたことに気がつき大騒ぎ。六甲山YMCAに電話し、スタッフに探してもらうも見つからず。待たせている友人たちに「ごめんね」を連発するTさんに対し、友人たちは「いいよ」と、携帯電話が見つかることを願っている様子。

結局、学科長であるH先生のワゴン車に乗り、本人が六甲山YMCAに探しに行くことになりました。Tさんの友人4人も助っ人として同乗。残る4人は正門でTさんたちの帰りを待っていました。

最終的に男子学生がTさんの携帯電話を発見。その時のTさんと一緒に探した4人の様子は青春ドラマものだったとか。正門で彼女たちの帰りを待ち続けた4人を含めて、彼女・彼ら9人は(車を出したH先生も?)、携帯電話の発見を通し、支え合いのつながり・きずなの芽生えを発見したのでは。

新学科最初の「新入生研修会」、忘れ物騒動により、ちょっといいものを発見できました。

これから学生生活の4年間、皆がそれぞれに、このような支え合いの体験を積み重ね、豊かな人間関係を築いてくれることを願っています。
(皆さん、携帯電話のおき忘れ、落とし物にご注意!)

ボランティア・チョコ?

先週末、面白いボランティアについての話を聞きました。女学生たちが、新潟中越地震被災地の方々に手作りのバレンタイン・チョコを届けるというのです。

まずは募金活動をし、集まった寄付金をもとにチョコ等を購入、バレンタイン・チョコを作り、そして被災地へ。受け取った方々は、行政や大きなNGO・NPOの支援とは異なる小さな支援、しかし、あたたかい心におおいに励まされるのではないでしょうか。

もちろん行政等による生活の根幹に関わる救援が第一です。そこに加えて、今回の女学生たちのような活動は、心の面でのサポートにもつながる、とても意義ある活動だと思います。

行政や大きな組織だけでなく、普通の人が自分たちのために動いている、自分たちのことを心配している、気にかけてくれている、そのように人々が感じられる社会的取り組みが、市民社会が育っていく上で、とても重要なことだと思います。

それにしても、斬新なアイディア。ある人が言いました。
「義理チョコではなく、ボランティア・チョコ!」

募金活動に参加

1月、阪神御影駅前で街頭募金のボランティアに参加させて頂きました。「白いリボン運動」というものです。

阪神淡路大震災の被災地では、震災の翌年から追悼、感謝、再生の願いをこめて白いリボン着用がはじまり、本年、震災10年を期に、地域再生やコミュニティの担い手であるNPOに対する民間募金運動として「白いリボン運動」がスタートしました。

私は、高齢者・地域支援のNPO法人のスタッフ・ボランティアたちと一緒に、日曜日朝10時から12時まで街頭募金に参加しました。寒く、人通りが少なかったこともあって、2時間で約3万円ほどの寄付でしょうか。それでも千円札を入れてくれる人が何人もいました。

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